矯正歯科の基礎知識

歯を抜かない方法とは

患者さんはもちろんですが、歯科医師も歯を抜かずに矯正できればそれが一番良いと考えています。歯を抜かないことが誰にとっても最善の方法とは限りませんが、抜歯以外の方法でスペースを作る方法についてもご紹介します。

「非抜歯矯正」について

矯正治療で抜歯をせずに歯を並べる、いわゆる「非抜歯矯正」の方法についてご説明します。

非抜歯矯正の方法は主に、

  1. 歯列を拡大する
  2. 奥歯を後方に移動する
  3. 歯の側面を少しずつ削る

の3種類があります。

いずれの方法もメリットとデメリットがあり、また、どんな歯並びでも適用できるというわけではありません。
それぞれの方に向き・不向きがありますので、信頼できる矯正専門医にしっかりと診て頂いたうえで適用できるかどうかを相談してください。

※歯の隙間が大きいなど、抜歯をしなくても歯がきれいに並ぶための十分なスペースがある場合は、上記の方法を必要としないこともあります。

歯列を拡大する(顎を広げる)方法

最も多くおこなわれている方法は、歯列を側方に拡大し、顎を広げてスペースを作る方法です。

歯列を拡大する方法

床矯正装置

歯列を側方拡大するには、「床矯正装置」と呼ばれる装置を使用します。
入れ歯のような装置を装着し、中央にあるネジを少しずつ巻いていくと中央部が左右に広がり、歯列を側方に拡大することができます。

側方拡大方式のメリット

  • 歯を抜かずに矯正をおこなうことができます。
  • 特に成長期の子供の場合、顎の発育をコントロールすることにより、非抜歯で治療できるケースが多くなります。
  • もともと歯列の幅が狭い人や、歯が内側に倒れているようなケースに向いています。

側方拡大方式のデメリット

  • 歯列を側方に拡大するため歯列が大きくなり、歯が前に出て突出した口元になり顔貌が悪くなったり、唇が閉じにくくなることがあります。再治療を希望する方が多いパターンです。
  • 拡大できる幅には限界があるため、どんな歯並びでも対応できるわけではありません。
  • 無理に多量に拡大したような場合は、後戻りが起きやすくなります。

奥歯を後方に移動する方法

奥歯を後方(奥側)に移動させてスペースを作り、歯を並べる方法です。

奥歯を後方移動する方法

後方移動装置

奥歯を後方移動するには、移動のための装置を使用します。
右の写真は、床矯正装置を使って後方移動をしている例です。
他にもヘッドギアや、インプラントアンカー、その他の装置を使用する方法があります。

後方移動方式のメリット

  • 歯を抜かずに矯正をおこなうことができます。
  • 側方拡大方式よりも、口元の突出感をおさえることができます。

後方移動方式のデメリット

  • 口腔内の奥行には限界があり、後方移動できる幅は限られているため、どんな歯並びでも対応できるわけではありません。
  • 埋伏した親知らずがある場合には移動できないため、親知らずを抜歯する必要があります。

歯の側面を削る方法(ストリッピング)

歯の外側のエナメル質をわずかに削って(ストリッピング)、歯の幅を少しずつ小さくして歯を並べる方法です。ディスキング、スライシングともいわれ、「部分矯正」でよくおこなわれる方法です。

ストリッピング

ストリッピングのメリット

  • 歯を抜かずに矯正をおこなうことができます。
  • 歯列全体を移動させないので、前歯だけを短期間で整えることができます。ガタガタの程度が軽度で、抜歯するほどではない症例でよくおこなわれます。

ストリッピングのデメリット

  • 歯を削れる量はわずかなので(歯の片側の0.5mm程度・1本の歯につき1mm程度)、削ってできるスペースは限りがあり、どんな歯並びでも対応できるわけではありません。軽度の不正咬合にのみ適用できます。
  • 奥歯の噛み合わせ自体が不正の場合には、それを改善することはできません。
  • 歯の外側のエナメル質を削るため、歯が弱くなる可能性があります。(通常は大きな影響は出ない範囲で削ります)
  • 歯の側面を削るため、歯がやや縦長になります。
  • 子供には適用できません。

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