矯正歯科の基礎知識

抜歯と非抜歯

矯正をする際に抜歯が必要なのかどうかについては、当サイトにも常に多くの方から質問があり、またドクターの間でも多くの議論があります。そこで、抜歯・非抜歯について、治療現場の最新動向を含めて徹底解説します。

矯正で抜歯をする理由:スペース不足

歯並びが悪くなっている原因の多くは、歯が並ぶ顎骨のスペースが足りないためです。
現代人は顎が小さくなる傾向にあるといわれます。昔の人類は自然界の硬いものをバリバリ噛んで食べていたはずですが、今は火を通して柔らかくしたカレーやハンバーグなど、あまり噛む必要のない美味しい食べ物ばかりです。
その結果、顎骨は退化し、顎がほっそりした小顔の人が多くなりましたが、その分小さい顎にすべての歯がおさまりきらなくなってしまいました。おさまりきらない歯は、重なり合ってデコボコに生えたり、斜めやV字に傾いたり、八重歯のように飛び出て生えたりします。これが歯並びを悪くしている原因です。

良い歯並び

良い歯並び

顎のスペースが十分にあり、顎と歯の大きさのバランスもとれていれば、歯はきれいに並びます。

悪い歯並び

悪い歯並び

歯の大きさに対して顎が小さかったり、逆に顎の大きさに対して歯が大きすぎたりすると、歯がきれいに並ぶためのスペースが足りず、歯は重なったり、横から生えて来たりしてしまいます。

スペースが足りない

足りないスペースが大きいほど、デコボコがひどくなってしまいます。

スペースを作るための抜歯

歯をきれいに並べるためには、この足りないスペースを何とかして確保しなければなりません。
スペースを確保するための最も確実な方法が「抜歯」です。歯を1本抜き、抜いてできたスペースを利用して残りの歯を並べます。しかし「1本」といっても歯並びは左右対称ですので、両側を抜く必要があり、また上下顎の正しい噛み合わせを作るためには上下の歯のバランスが合っていなければいけませんので、通常は上下ともに抜きます。
つまり、上下左右1本ずつ、計4本を抜歯します。

抜歯

抜くのはどの歯?

抜くのはどの歯

    歯の名称 抜歯
前歯 1 中切歯  
2 側切歯  
3 犬歯(糸切り歯)  
奥歯 4 第一小臼歯
5 第二小臼歯
6 第一大臼歯(6歳臼歯)  
7 第二大臼歯(12歳臼歯)  
8 第三大臼歯(親知らず)  

歯を抜くのは、どの歯でもよいというわけではありません。
前歯は、食べ物を噛み切るためや見た目の点からも重要です。犬歯は前に飛び出して八重歯になっているケースが多いですが、根が深く丈夫な歯で、噛み合わせに重要な働きをするため、八重歯になっている場合でもできるだけ抜きません。
奥歯も、後方の大臼歯は食べ物を噛み砕いたり噛み合わせを作るために重要ですので、抜きません。

そのため、通常は比較的役割の少ない小臼歯を抜きます。
小臼歯は2本ありますが、通常は犬歯のすぐ後ろにある「第一小臼歯」を抜歯します。虫歯がある場合や患者さんの歯の状態によっては、「第二小臼歯」を抜く場合もあります。

※親知らず(第三大臼歯)については、多くのケースで抜歯をおこないます(抜歯をしないこともあります)。「非抜歯矯正」でも、親知らずだけは例外とされることもあります。

抜歯矯正の特徴

抜歯矯正の特徴

抜歯矯正のメリット

  • 抜歯により確実にスペースを確保できるので、歯並びを劇的に変化させ綺麗な口元を作ることができます。
  • 特に、出っ歯の症状を奥に引っ込める場合に効果的です。
  • 顎がほっそりして、小顔の印象になります。
  • 後戻りが起きにくいことも特徴です。

抜歯矯正のデメリット

  • 歯を抜く必要があります。(通常、上下左右4本)
  • 歯列弓が小さくなるため、人によっては笑った時に口元に影ができたり、黒い部分ができたり、しわができたりする場合があります。

抜歯以外のスペースを作る方法

では、顎のスペースを作る方法は抜歯しかないのでしょうか。必ずしもそうではありません。
抜歯以外の方法でスペースを作り矯正をおこなう方法が「非抜歯矯正」です。非抜歯矯正については、歯を抜かない方法とはでご説明いたします。